金融ライセンスと金融監督機関

金融ライセンスと金融監督機関

金融監督機関は、ブローカーを監督、規制する機関である。金融ライセンスを取得するということは、ライセンス元の金融監督機関の規定に準じていることを証明すると同時に、今後も規定に従うことを意味する。

このことから、金融ライセンスはブローカーの安全性を測る大事な指標の一つとなる。本ページでは、主な金融監督機関の規定について解説していく。

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金融ライセンスとは、金融監督機関(金融を管理するための公的機関)から与えられる金融商品取引業を営業する許可、認可、登録を指す。金融監督機関とは国家によって管轄され、金融機能の安定を図ることを目的とし組織されている。金融ライセンスを取得するということは、金融監督機関が定める規定、規制に従う義務があることを意味する。

多くの種類の金融ライセンスが存在し、各金融監督機関により定める制度は異なる。厳格なルールを設けていることからライセンス取得が困難なものから、寛容なルールが多く比較的ライセンスの取得が容易なものまで様々だ。

また、金融監督機関により規制される内容が異なるため、ブローカーがどの金融監督機関に属しているのか知っておくべきだろう。

グローバルにおける監督体制・規制見直しの枠組み

主要国の金融ライセンス一覧

以下では、主な金融ライセンスを表にまとめた。

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名称和名発行元取得難易度
JFSA日本金融庁日本
FCA英国金融行動監視機構イギリス(UK)
CySECキプロス証券取引委員会キプロス共和国
ASICオーストラリア証券投資委員会 オーストラリア連邦
CIMAケイマン諸島金融庁ケイマン諸島
FSCA南アフリカ金融サービス委員会南アフリカ共和国
DFSAドバイ金融サービス機構アラブ首長国連邦
SCBバハマ証券取引委員会バハマ
IFSCベリーズ国際金融サービス委員会ベリーズ
BVIFSC英国領ヴァージン諸島金融サービス委員会イギリス領バージン諸島
FSCモーリシャス金融サービス委員会モーリシャス共和国
VFSCバヌアツ金融サービス委員会バヌアツ共和国
FSAセーシェル金融庁セーシェル共和国
SVGFSAセントビンセント・グレナディーン諸島金融サービス庁セントビンセント・グレナディーン諸島

各国の金融監督機関と金融ライセンスの特徴

以下では、主な金融ライセンスの特徴について解説していく。

日本金融庁(JFSA)

和名日本金融庁
英語名称Financial Services Agency
URLhttps://www.fsa.go.jp/

後述するFCAをモデルにしたとされ、世界的にも厳格な金融ライセンスとして知られる。日本金融庁の第一種金融商品取引業の登録には以下の要件が存在する。

  • 資本金5,000万円以上
  • 純資産額5,000万円以上
  • 自己資本規制比率120%以上
  • 国内に営業所があること
  • 海外業者の場合は国内における代表者がいること

また、金融先物取引業協会(FFAJ)は、国内FXの規制・苦情処理および紛争解決のためのあっせん・調査・企画・広報・研修等の業務を行っており、以下のことを規制している。

  • 信託保全の義務付け
  • ロスカットルールの義務付け
  • 個人口座のレバレッジは25倍以下であること
  • 法人口座のレバレッジは、業者等は自社の価格等を用いて自社で行うか、計算業務を外部委託するか、又は金融先物取引業協会が計算し、公表する数値を利用すること

JFSAライセンスの最大の特徴は、完全信託保全を義務化していることである。ブローカーが破綻した場合、顧客は口座残高+含み損益が全額返還される完全信託保全は、世界でも極めて手厚い補償制度となっている。

しかし、金融商品取引法(第四十条の第二号)により、ブローカーが顧客の損失を補填することを禁止しているため、国内FXではゼロカットシステムは導入できない(完全信託保全はブローカーが補填しているわけではない)。

「最大レバレッジ25倍」「ゼロカットなし」の規制下では、FXのメリットを十分に発揮できないことから、意図的に日本金融庁に登録をしていないブローカー、いわゆる海外FXブローカーが存在する。

英国金融行動監視機構(FCA)

和名英国金融行動監視機構
正式名称Financial Conduct Authority
URLhttps://www.fca.org.uk/

FCAは、世界で最も審査基準が厳しい金融ライセンスとして認知されている。

審査基準は資本金を始め、外部機関による監査の義務化、顧客のサポート体制のチェック、顧客資金取扱規定 (CASS)による分割管理の徹底、など多くの条件をクリアする必要がある。また、これらの条件を一度満たしても、ブローカーはFCAに経営状況を毎年報告する必要があり、FCAの基準に満たない場合はライセンス剥奪となる。

FCAの認可を得たブローカーは、補償機関であるFSCSに加盟することが義務付けられている。これにより、ブローカーが破綻した場合、顧客は最大8.5万ポンド(約1,300万円)が補償される。それ以外では下記が義務化されている。

  • 厳格なレバレッジ規制(新規顧客は最大レバレッジ25倍、取引経験が12ヵ月以上ある顧客は最大レバレッジ50倍)
  • ボーナスの提供を禁止

ちなみに、FCAはイギリス政府から独立した機関であるため、イギリスの法人のみならず、イギリス国外の法人であってもFCAライセンスを取得することが可能だ。

FCAを取得しているブローカー

ブローカーアカウントライセンス番号
XM海外向け705428・538324
Exness海外向け730729
HFM海外向け801701
FxPro海外向け509956
iFOREX海外向け613381
LandFX海外向け709866
IronFX海外向け585561

キプロス証券取引委員会(CySEC)

和名キプロス証券取引委員会
正式名称The Cyprus Securities and Exchange Commission
URLhttps://www.cysec.gov.cy/

キプロス共和国には、多くのFXブローカーが本社を構えており、世界有数のFX大国である。

2004年、キプロス共和国がEUに加盟したことにより、MiFiD(金融商品市場指令)に準ずることとなる。また、2016年の規制強化により世界でも有数の厳格な審査基準を設ける金融ライセンスとなった。

CySECの特徴は、ゼロカットシステムを義務化していることである。これにより、資金以上の損失を出した場合でも追証のリスクは極めて低くなる。

また、CySECの認可を受けたブローカーは、ICF(投資家補償基金)に加盟することが義務付けられている。これにより、ブローカーが破綻した場合、顧客は最大2万ユーロ(約280万円)が補償される。それ以外では下記が義務化されている。

  • 出金申請の翌日には出金手続きを完了する
  • 最大レバレッジは50倍(申請があれば最大レバレッジ500倍)
  • ボーナスの提供を禁止
  • 分割管理で顧客に資産を管理

CySECライセンスを取得しているブローカー

ブローカーアカウントライセンス番号
XM海外向け120/10・256/14
Exness海外向け178/12
HFM海外向け183/12
FBS海外向け331/17
FxPro日本向け078/07
iFOREX海外向け143/11
Traders Trust海外向け107/09
FXGT海外向け382/20
IFC Mrakets海外向け147/11
easyMarkets海外向け079/07
IronFX海外向け125/10
Milton Markets海外向け248/14
Exclsive Markets海外向け330/17

ケイマン諸島金融庁(CIMA) 

和名ケイマン諸島金融庁
正式名称Cayman Islands Monetary Authority
URLhttps://www.cima.ky/

ケイマン諸島はイギリス領であることから、イギリス本土と似た法律、規制が多くみられる。また、ケイマン諸島外で行われたビジネスに対して法人税が発生しないため、タックスヘイブンとして知られる。その結果、多くの金融業者がケイマン諸島に本拠地を置くことで世界有数の金融センターとなった。

CIMAライセンスを取得するには以下の条件があり、オフショアライセンスの中でも突出した規制機関であり、信頼性のおける金融ライセンスである。

  • 毎年外部機関による監査の実施
  • 決算書の提出
  • コンプライアンス証明書の提出
  • 資金管理状況の報告
  • 月次取引明細の発行

CIMAライセンスを取得しているブローカー

ブローカーアカウントライセンス番号
Tradeview海外向け585163
Vantage海外向け1383491

バヌアツ金融サービス委員会(VFSC)

和名バヌアツ金融サービス委員会
正式名称Vanuatu Financial Service Commission
URLhttps://www.vfsc.vu/

VFSCは、以前は比較的容易に取得できるオフショアライセンスであったが、2019年3月に規制を強化し、以下を義務付けている。

  • ライセンスを3段階に分類し、それぞれの階級により提供できるサービスが異なる
  • 取締役は5年以上の証券取引経験者
  • 経営者、もしくは取締役が1年のうち6ヶ月はバヌアツに滞在
  • ソフトウェアシステムが備わった不動産を所持
  • 監査法人が金融機関の監査を行うには、事前にVFSCの許可を得る
  • 専門職業賠償責任保険に加入する

専門職業賠償責任保険に加入するには多額の資金が必要なため、資金力のないブローカーはライセンス取得を断念せざるを得なくなった。また、VFSCの規制強化は今後も行われていくことが想定され、オフショアライセンスの中でも安全性の向上に力を入れている金融監督機関と言える。

VFSCライセンスを取得しているブローカー

ブローカーアカウントライセンス番号
TitanFX日本向け40313
FBS日本向け14812
Milton Markets日本向け40370
ThreeTrader日本向け40430
Vantage日本向け700271

英国領ヴァージン諸島金融サービス委員会(BVIFSC)

和名イギリス領バージン諸島金融サービス委員会
正式名称British Vergine Islands Financial Services Commission
URLhttps://www.bvifsc.vg/

バージン諸島もケイマン諸島と同じくイギリス領であり、タックスヘイブンとしての顔を持つ。

しかし、BVIFSCライセンスはFCAやCIMAより比較的容易に取得することができるため、安全性では劣る。資本金を定めておらず、ブローカーが破綻した場合の補償は特に定めていない。

BVIFSCライセンスを取得しているブローカー

ブローカーアカウントライセンス番号
Exness海外向けSIBA/L/20/1133
iFOREX日本向けSIBA/1/13/1060
IFC Mrakets日本向けSIBA/L/14/1073
easyMarkets日本向けSIBA/L/20/1135

ベリーズ国際金融サービス委員会(IFSC)

和名ベリーズ国際金融サービス委員会
正式名称International Financial Commission Belize
URLhttps://www.belizefsc.org.bz/

リゾート地として人気のあるベリーズだが、オフショア国としても知られる。

IFSCライセンス取得の条件の1つに資本金が50万米ドル(約7,000万円)以上であることが挙げられている。また、法人をベリーズ国内に置かなくてもライセンスを取得できるため、多くのペーパーカンパニーがIFSCライセンスを取得しているのも事実である。

これらのことから、IFSCは安全性の高い金融ライセンスとは言い難い。

IFSCライセンスを取得しているブローカー

ブローカーアカウントライセンス番号
XM海外向け000261/309
AXIORY日本向け000122/267
FBS海外向け000102/198
GeneTrade日本向け000270/322

セーシェル金融庁(FSA)

和名セーシェル金融サービス庁
正式名称Financial Service Authority Seychelles
URLhttps://fsaseychelles.sc/

FSAは、分割管理にて顧客の資産を管理することを義務化しているが、FXPEDIAでは分割管理は最低ラインの資金管理方法であると考えているため、特筆すべき点ではない。

それどころか、FSAは公式ホームページにて「最低資本金制度なし」「会計監査の必要なし」「会社秘書の必要なし」と明記している。容易に取得できることを大々的に発信しているため、安全性は決して高いとは言えない。

FSAライセンス取得しているブローカー

ブローカーアカウントライセンス番号
XMTrading日本向けSD010
Exness日本向けSD025
HFM海外向けSD015
GemForex海外向けSD116
easyMarkets海外向けSD056
Milton Markets海外向けSD040
Exclsive Markets日本向けSD031

日本金融庁(JFSA)と海外FXの関係性

FXPEDIAで情報提供を含め掲載しているブローカーの中には、内閣総理大臣に金融商品取引業の登録をしていないブローカーも含まれる。その背景には、投資性のある金融商品を取り扱う業務を行う場合は、金融商品取引法やその他法令が大きく関係しており、意図的に登録を得ないブローカーが大半である。

海外FXの定義とは

金融商品取引業の登録を受けて営業活動していれば国内FX、登録がなく営業活動していれば海外FXと呼ぶ。

ただし、国内外にかかわらず、どこの金融監督機関の認可も下りていない、いわゆるノンライセンスブローカーも存在する。その場合、国内に法人があれば国内FX、海外に法人があれば海外FXと呼ぶ場合もある。

なぜ海外FXは日本金融庁(JFSA)の許可を得ないのか

金融ライセンスを所持すると言う事は、金融監督機関の規定に準じることを意味する。日本金融庁の認可を得ることで、レバレッジ25倍以上の取引とゼロカットを導入することができない。また、日本はタックスヘイブンではないため、ユーザーに豪華なボーナスを配布することは困難を極める。

海外FX国内FX
レバレッジ1,000倍以上も可能最大25倍※1
ゼロカットほとんどが導入なし
信託保全基本的にはない完全信託保全
  1. 取引の額の4%以上の証拠金を預託させなければならない。詳しくはレバレッジについてを参照。

つまり、我々が海外FXに求める3大要素である、ハイレバレッジ・ゼロカット・豪華なボーナスをトレーダーに提供するためには、日本金融庁の許可を得ない、という選択の他にない。

日本金融庁(JFSA)が海外FX取引業者を注意・警告していることについて

日本金融庁は「無登録で金融商品取引業を行う者の名称等について」にて警告書を発出した国内外の者を公表している。また、「無登録の海外所在業者による勧誘にご注意ください」にて、海外の無登録業者を使用しないよう注意喚起を行っている。

日本金融庁の言う「無登録業者」の定義は、日本金融庁に登録せずに国内に向けて金融商品取引業を行う者のことを指す。そのため、他の金融監督機関に登録しているブローカーもノンライセンスブローカーと肩を並べ、一括りに「無登録業者」として警告・注意喚起をしている。

無登録業者は違法となるが、海外FXを利用した国内のトレーダーを罰する法律はないため、我々トレーダーが罰金や罰則などの処罰が下されることはない。

日本金融庁(JFSA)の圧力により日本から撤退を余儀なくされたブローカー

ASIC(オーストラリア)の規制の下、日本にサービスを提供していたPepperstoneは2014年、AxiTrader(現在はAxiに名称を変更)は2018年5月に日本を撤退している。現在ASICに規制されている企業は、日本にサービスの提供を行っていない。

これは、日本金融庁がASICに対して、日本に向けてサービスを提供しないよう圧力をかけたとされている。

Axiは、2022年8月から再度日本にもサービスの提供を開始したが、ASICの規制下にある法人ではなく、SVGFSAライセンスを取得した別法人が運営している。

よくある質問(FAQ)

金融ライセンスとは

金融ライセンスとは、金融監督機関が投資事業を行うことを許可すること、もしくは許可したものに発行される許可証のこと。金融ライセンスを取得するということは、ライセンス元の金融監督機関の規定に準じていることを証明すると同時に、今後も規定に従うことを意味する。

信頼性のある金融ライセンスとは

イギリスのFCA、セーシェルのCysEC、オーストラリアのASIC、ケイマン諸島のCIMAが信頼度が高いとされている。日本金融庁(JFSA)は完全信託保全を義務付けしており、世界的にも信頼性が高いとされているが、ゼロカットの導入を禁止している。

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著者情報

トレード歴8年の元証券会社勤務の編集長を筆頭に、複数名の現役トレーダーとサイト情報の更新を行っている。トレーダー目線で偽りのない有益な情報を発信することを心掛ける。また、コンテンツ内には客観的な事実をもとに編集部の見解を述べている。